ブラジルの子どもたち:最優先はどこへ

ABONG(ブラジルNGO協会)のニュースレターのトップページに、「ブラジルの子どもたちへの暴力が増加している」という記事がありました。NGOの調査により、今まで見えないままであった子どもへの暴力が社会問題といて認識されつつあると希望ももてますが、抗争による死や虐待に苦しんでいる子どもたちが非常に多く存在していることはいまだにブラジルの抱える深刻な社会問題なのではないでしょうか。以下、ニュースレターからの抜粋です。

 何らかの暴力の犠牲となっている子ども・若者たちの数がブラジルで急増している。構造的暴力要因では、0歳から14歳の子どもの64.4%が一人当たり所得最低賃金一か月分以下の世帯で暮らしている(2003年PNADデータ)。下痢による5歳未満の死亡率は4.4%で、9.5%の州もある。1歳未満の乳児死亡率は1000人中25.1と減少したが、5歳未満の幼児死亡率はいまだ35である。
 もっとも劇的なのは、幼児死亡率の下降と同時に、若者の死亡率が増加したことである。10年間に、15歳から17歳の若者の殺人事件の被害者数は3倍に増えた。ブラジルでは一日に16人の若者が殺されており、これは子どもや若者に対する施設内での暴力やパーソナルな抗争が増加したことを示している。現在、ブラジル中に存在している死の部隊の標的は、都市近郊の黒人の若者である。 
しかし、子どもに対する他の暴力を忘れてはならない。それは家庭内暴力である。「しつけ」のための身体的懲罰として文化的に受け止められ、非正当的にブラジルの法律では許されている、見えない暴力である。性的暴力は、ブラジル全土で行なわれている。
 こうした暴力のすべてのケースにおいて、社会階層、人種、エスニシティ、居住地域、障害の状況に着目する必要がある。もっとも被害を受けているのは貧困状態で生きている黒人女性であり、殺人の場合は少年であり、性的搾取の場合は少女であり、大部分が都市の社会的排除層である。この暴力は、ブラジル社会の性質と位置づけられている。経済的に同じ状況かそれ以下のレベルにあるどの他の国のよりも、多くの子どもたちを傷つけ、命を奪っている。そうした暴力は、生後間もなく訪れる。幼児期に「ヘロデ・シンドローム」と呼ばれる状況で生きている。
 政治的課題において幼児期が考慮されていないことや社会政策面での二次的な扱いは、こうした暴力を容認する状況を作り出している。それらが自分たちの生活に被害を与えるときだけ彼らの問題を思い出す。そして、暴力の問題は法的秩序の問題であるとして、少年法の年齢引き下げや罰則の強化という若者を有害な存在とする考えが大多数の人々に許容されるようになる。
 ABONGは子どもの権利のための法律強化のため活動してきた。発効後15年となる児童青年法(ECA)はその代表的なものである。残念ながら、児童権利促進局の管轄元である人権局のステイタスは落ち、2006年度の予算は53%カット、この数値はこれまでで一番低い。
 今年末には第六回全国児童権利会議が開催される*1。武装した少年が日々倒れている内戦状況下で、「子どもの友だち」とアピールするだけの政府はいらない。私たちの目的は、この会議で描かれる子どもに対するすべての暴力に立ち向かう政府政策が「(子どもの権利は)絶対的最優先事項」だと憲法に示されている形で議論されることにある。
*1  総務部人権局主催。2005年12月12~15日ブラジリアにて開催予定。
(ABONG Newsletter No.323 “Infância brasileira: onde ficou a prioridade?”)

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