エマウスに滞在して

山崎 那菜


今日からエマウスの仲間入り

私は、2009/7/27〜9/3まで、日本からの研修生としてエマウスに滞在しました。ベレンに到着したのは7月の休暇が終り、8月の新学期を迎える時期でした。7/27にベングイという地区にある施設で行われたミーティングに参加し、スタッフ達に紹介してもらいました。15人程集まっていて、意外と大きな組織なのだと驚いたことを覚えています。翌日から、色々なスタッフの家に滞在させてもらい、各家を拠点にジュルーナスという地区の施設に毎日通うことになりました。7月最後の週は午前中だけなので、20〜30人くらいの子どもたちが来て、絵を描いたり遊んだりしていました。毎日少しずつ増える子どもたちは「日本語でしゃべって!」「名前を書いて!」と、どんどん話しかけてくれたので、少し緊張していた私も、すぐジュルーナスの生活になじむことができました。

『ミーティング後のスタッフ達』
これからよろしくお願いします
『昔作ったというお面』かっこいい!
アルチやカポエラなどのクラスは8月からということでしたが、最初の日に誰も先生が来ず、その後も遅く来たり、午後になったらいつの間にかいなくなっていたりして、どういう仕組みになっているのかわからず、他のスタッフに聞いても「わからない」で終わってしまっていたので正直がっかりしたところもあります。でも、休み明けだし、ここ(ブラジル)のリズムはそうなのかな?と思い直して、折り紙や絵を描くなど、こちらから声をかけて色々子どもたちと活動できたので楽しく過ごせました。
『花の写生』をした後、バックにお城描
いちゃうなんて素敵だなーシビレマス
『アルチで折り紙』覚えた子が先生になってます
結構手厳しい・・・?
ですが、一つ残念なことがありました。デザインの先生に対して少し疑問に思うことがあり、話しをしてみたのですがうまく意思の疎通がはかれず、彼のクラスにあまり関らなくなってしまったことです。というのも、日本から子どもたちのために持参した画材を、彼が個人的に使ってしまうのではないかという怖れが私にあったからです。このことについて、私が1人で思い込みをしてしまったので嫌な感情が大きくなり、ルシアに相談もせず、田村さんがエマウスに来られるまで黙っていたのは良くありませんでした。田村さんに通訳をしてもらって、ルシアと話し、エマウスの備品は、先生ではなくエマウスが保管することを確認できたので納得しましたが、こんな簡単なことを聞くことができなかった自分が本当に残念です。疑問に思うことは質問し、話をして、お互いのよいところを伸ばしあう関係をつくるべきでした。

例えば、活動の一部分しか見ていないので実際はわかりませんが、先生が描いたものを子どもたちが塗るという行為が多いように感じたので、どのような意図でそれを行っているのか聞いてみたかったです。中には『自分は絵が描けない』と思いこんでいる子もいました。芸術活動は全ての子どもが持っている能力ですし、総合学習でもあります。心や情緒の発達にもとても有効なので、立体制作や、描画でも、アクションペインティング(絵の具をたらす、叩きつける、飛びちらせるなど、具体的なものを描くというより、絵を描く行為自体を強調したもの)やコラージュ(様々な素材を貼り付けて作る作品、雑誌や広告の切り抜きなどを用いたフォトモンタージュは、セラピーでもよく使われる技法)などを提案してみるのもよかったかもしれません。また、作品や制作過程において、子どもたちにかける言葉次第で、創造力の広がりが大きく変わってきます。そのことについても、日本とブラジルという、異なるメンタリティを持った人達と話すことは有意義だろうと思いました。
『ゴムとび』小さい子からアルチの子まで大人気 『お絵かき交換』日本の子ども達が
描いた絵にお返事を描いています
私はよく、「自分は何もできない、たいしたことはない」「勉強中なのに人に意見するなんてとんでもない」「間違ったことを言ったり行ったりするのが怖いから黙っている、何もしない」という考えに捕らわれてしまいがちです。今回エマウスに滞在したことで、何もできないなんて人は誰もいないし、知っていること、持っている能力はどんなに小さなことでも、表に出し人と分かち合うこと、相手を知り、様々な意見ややり方を知ることで、自分が成長できるのだということを強く感じました。日本では美術教室の講師(課外授業や保育、イベントなど)をするかたわら、表現アートセラピーを学んでいたので、表現することによる心の発育にとても関心を持っています。アルチの女の子達を対象にしたワークショップでは、表現アートセラピーにとても近いことが行われていて勉強になりました。今後、インターネットなどを通じて、私にできることをしながら関っていきたいと願っています。
性差についてのワークショップでファシリ
テーターとして来ていたエジアーニは
その後スタッフになりました☆
アルチにセラピストでもあり修道女でも
ある方を招いてのワークショップ
ひとりが太陽役、もうひとりが
月役になって話をしています
私がエマウスの存在を知ったのは、アルチの人形再生のことをHPで見たのがきっかけでした。ブラジルの階級社会が生み出す、富裕層と貧困層の差を解決することは、とても時間がかかることです。その問題に挑み続けるというのは、本当に愛と根気と忍耐と強い思いがないとできないと思います。長く同じスタッフをやとう金銭的余裕がないことや、プロコン(消費者権利を啓蒙する団体)から派遣されているスタッフで、エマウスが一定期間受け入れているスタッフ(給与はプロコンから出ているので、エマウスで人材を選ぶことが出来ない)もいるという話を聞き、それでも長い間活動が絶えずにいることに深い感銘を受けました。エマウスの考え方を理解したスタッフが、長く勤務できる体制が整えば素晴らしいかもしれませんが、色々な人がいて、それぞれその人なりのやり方で関り、その中で成長していくのがよいバランスなのだろうなと思っています。今の組織運営体制はこうだから仕方がない、とあきらめるのではなく、それはそれとして、私はこうしてみようか、こんなことを提案してみようかという感じで今後もお付き合いをしていきたいです。ついかたく考えてしまう癖があるので、200年前と比べたらすごくよくなってるでしょ?最終的にはどうにかなっちゃうんだから!という明るい気持ちを忘れないようにしたいです。                               
『写真大好き』デジカメを持ってないと、ロッカー
から取って来て撮れと言われることも・・・
『ベングイは緑がいっぱい』壁がフェンスなので
そよ風が気持ちいいです
『お母さん達のアクセサリークラス』
すごくおしゃれです
最後にいくつか、私がエマウスの活動の中で感じたことを書きます。ルシアがアルチの学期初めの話し合いで、女の子たちに何をしたいのか自分の意見を持ち、それを伝えること、何かを習うためには講師を雇うことが必要で、来てもらうからには、彼女たちが継続して参加することと、技術を習得し生活に生かしていくことが大切だと語っていました。収入につながる技術を習得することは、将来のためにとても重要だと思います。ただ、そのような活動とともに、結果を評価されない、彼女たちの心が喜ぶ、自身のためだけの芸術活動を取り入れることもよいのではないかと思います。もう少し長く滞在していたら感じ方は違うと思いますが、彼女たちを取り巻く環境や心の問題を扱っていくには、少し余裕がないように感じました。私はポルトガル語で説明したり、理解したりすることがまだよくできないので、あくまで限られた情報の中で感じたことしか書けません。また、エドゥカドーラのルシアとダリバウド以外のスタッフは、今年の6月から新しく集められた半年から1年契約の人達で、7月に長い休暇があり、これから活動がスタートする切り替わりの時期だったということも影響があると思います。

スタッフに余裕がないと感じたのは、各クラスの先生たちはそれぞれの部屋で活動をし、アシステンチ ソシアウ(社会福祉士?)というスタッフは訪れる親の相手をしたりパソコンに向かったりしている仕事が多く、子どものそばにいるより事務室の中にいる時間が長いと感じたからです。エドゥカドーラはあちこち動いていますが、ルシアはアルチの部屋で女の子達や訪問客と話す時もありますし、ダリバウドは会議などでベングイや外に出ている日もあります。活動に参加せず、部屋から離れてふらふらしている子がいるのはある程度仕方ないですが、そういう子の中に時々「少しひっかかるなぁ、気になるなぁ」と思う子がいたりして、その後、エマウスに来ていないので顔を見てない子もいます。そのような子達を見守る目というか、余裕がもう少しあるとよいと思いました。この意見は、最終日にルシアがスタッフの前で私に話をする機会を与えてくれ、田村さんに通訳をしてもらったので、みんなに伝えることができました。緊張しましたが、黙っていたら私は自分にできることを考えなかったと思うので、伝える機会をいただけてよかったです。どうもありがとうございました。
                             
『パーカッション』外に演奏に行くこともあります
ここはセントロにある音楽学校です
楽器がゴージャス!
『最終日』
食堂で私のためにお別れ会をしてくれました
みんな本当にどうもありがとう!大好きだよ
『食後』
まったりおしゃべり中
嬉しかった思い出は、いつも友達と話さず一人でご飯を食べる男の子がいて、気になって話しかけたら、その時は無言でしたが、私がベレンを去る日にその子が笑顔で声をかけてくれたことです。1ヶ月間一度も笑顔を見たことがなかったので、その子の笑顔が、ものすごくまぶしくて記憶に残っています。もう一人、アルチの女の子で、ぶすっとした「やってらんねー」的態度をよくとる子に名前で呼びかけたら、「あたしの名前知ってるんだ!」とめちゃめちゃかわいい顔で喜んでいたのも印象に残っています。一言でも子どもたちに声をかけて「あなたがいることを知ってるよ、見てるよ」と伝えることは、簡単なことだけど、こんなに大事なんだなと改めて思いました。子どもたちやスタッフが、たくさん話しかけてくれて、名前を呼んでくれて、毎日毎日ほめてくれたので、私はいつも落ち着いた幸せな気分でいられたんだと、本当に感謝しています。エマウスに出会えたことは、私にとって生涯の宝になりました。どうもありがとうございました。                               

2009年9月28日   山崎 那菜

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