エマウス共和国運動体験記
[滞在期間:2011年8月18日〜9月3日(17日間)]


中谷 菜美



<エマウスとの出会い>

私のエマウスとの出会いは、本当に偶然だった。「海外で子どもと関わるボランティアをしたい」という、ずっと温めていた想いと、ブラジルへの興味が交差して、たどり着いたのがエマウスだった。将来、弱い立場にいる子どものために何かしたいとの想いがあり、自分がどんな関わり方をしたいのかを見極めたかった。また、日本で日系ブラジル人の子どもたちを支援する活動をしており、彼らの文化背景を知りたかったことと、ポルトガル語を学びたいと思っていた。そこで、「ブラジル×子ども」というキーワードでボランティア先を探していた際に、最初にお返事をくださったのが、エマウス代表の田村さんだった。ブラジルの治安って心配!?アマゾン!?サンパウロから3000km!?と、一瞬躊躇したのも事実だが、活動の内容にとても興味があったことと、田村さんやメンバーのみなさんに、エマウスのスタッフの方の魅力やベレンの食についてのお話をお聞きしてベレン行きを即決した。

<お世話になったダリバウド>

私はエマウスで約20日間お世話になった。エマウスのスタッフであるダリバウドの家に住ませていただき、家族の一員のように接してもらった。私は、ポルトガル語は初めてだったので、お互いの意思疎通には少し時間がかかる。でも、ダリバウドはそんな私の言葉に一生懸命耳を傾けてくれ、わかりやすい単語でいろんなことを教えてくれた。ベレン市内を案内してくれたり、アマゾン川のビーチや民芸品のマーケットに連れて行ってくれたりと私にたくさんの経験をさせてくれた。ダリバウドの家族にも本当に優しくしてもらい、幸せな20日間だった。

ダリバウドに出会えただけでも、エマウスに行って良かったと思っている。ダリバウドの生き方から、たくさんのことを学んだ。人に優しく。損得を考えずに、子どもたちや貧しい人たちに無償の愛を与える。苦しい現実をいつも目にしながらも、その活動を続ける。簡単にできることではないと思う。
ダリバウド(右端)と子どもたちと。 ダリバウドとアマゾン川沿いを歩く。
浴衣とはっぴを着て嬉しそう アマゾン川の夕日が美しかった!
<エマウスでの活動>

エマウスには2つの施設があるが、私はダリバウドが勤めるジュルーナスの施設に毎日通った。ジュルーナスには、午前と午後合わせて90名くらいの子どもたちがやってきて、カポエイラ、演劇、パーカッション、アルチ(美術)などのクラスに参加した後、ごはんをもらって帰っていく。私は、午前中は子どもたちと一緒にカポエイラの授業に参加して子どもたちと一緒に汗を流した。午後は、美術のクラスを担当させてもらい、折り紙や習字、ソーラン節や浴衣の体験など、日本の文化を子どもたちに紹介した。最初は新しく来た私を試しているような、そんな視線を感じていたが、毎日接しているうちに打ち解け、毎日の活動を楽しみに待っていてくれるようになった。特に折り紙は気に入ったようで、なかなか覚えられないと愚痴をこぼしながらも、一生懸命作っていた。最後の授業の日に別れるのがとても名残惜しかった。
子どもたちと折り紙。みんな興味津々! 浴衣の体験中!鏡でポーズを決めて写真大会でした。 折り紙に熱中するアルチの女の子。


<印象に残ったできごと・貧困・格差について考える・>

印象に残っている出来事は、ダリバウドにエマウスがある貧困地区であるジュルーナスを案内してもらったことだ。貧困、暴力、麻薬など様々な危険と隣り合わせの状況にいる子どもたち。でも、エマウスでの様子を見ているだけでは、彼らの置かれている現実はわからない。子どもたちが普段、どんな街でどんな生活をしているのか知りたかった。ベレンで一番治安が悪いと言われている地区で、慣れているダリバウドでさえも携帯をズボンの中に潜ませなければいけない場所。少しの恐怖と緊張感を感じながら、子どもたちが普段生活している通りを歩く。混沌とした街に、人々の活気を感じる。その反面で、不衛生な通りや、壊れそうな家々を目にする。

 街では、最も貧困な層とされている方の家におじゃますることができた。細い道を奥へ奥へと進んでいくと、今にも壊れてしまいそうな木の家があった。トイレがなく、ビニール袋に用を足してそれを道端に捨てるそうだ。エマウスでは、「環境教育」を子どもたちや子どもたちの親に対して行っているが、どうしてそんな活動をしているのか、この経験を通して初めて理解できた。貧困地区に住む子どもたちにとって、身の回りの清潔と住居環境を衛生的に保つことが、彼らの命を守るために、とても重要なのだ。

 同時に、ブラジル国内の格差についても強く感じた。都市が近代化されていく一方で、そこからはずれて貧困地区に住む人たちの生活は何一つ変わらない。貧困、格差とは何か。これらを実感として捉えて、考えることができたことがエマウス滞在の大きな収穫だった。 

衛生環境についての勉強会に参加する子どもたちの親。


<エマウスで得たこと>


エマウス共和国運動で得たものは、自分の期待よりも大きかった。当初の目的だった自身の将来を考えるという目標については、NGOで働くということ、草の根で子どもたちと関わることとはどういうことかということが、ダリバウドや他のスタッフといろいろな話をする中で少し見えてきた。仕事の醍醐味ももちろん感じたが、それと同時に、辛い現実を目にすることも多く、悩みながらの仕事であることを感じた。自分の利益を考えず、貧しい子どもたちのために愛情を注ぐスタッフの姿に感銘を受けた。また貧困、格差というものを肌で感じ、考えることができたことはとても良い経験だった。  

他にも、ベレンでは多くの貴重な出会いがあった。ここでの出会いは自分の将来の大きな糧になると感じる。今後も、ベレンで出会った人と、そしてエマウスとずっとつながっていたい。  

エマウスの活動は地道な活動であるが、そこに関わった子どもの運命を大きく変える可能性を持っている。ダリバウドと街を歩いたときも、道端で、エマウスを卒業してしっかりと働いている青年に出会った。少しでも多くの子どもたちが、心のよりどころをみつけ、社会で頑張っていける力をつけられるよう、エマウスの活動を応援したい。私もここでできることを、少しずつ行っていきたいと思う。  


お世話になった全ての方に心からの感謝を込めて、この報告を締めくくりたいと思う。本当にありがとうございました。                               
フェアウェルパーティーにてソーラン節を子どもたちと踊る。大盛り上がりで、合計10回くらい踊りました! エマウスのスタッフのみなさんと。カポエイラの先生シャイネ(左端)、パーカッションの先生ジョアンパウロ(右端)、ダリバウド(中央)。




<おまけ★ベレンの食の魅力>

ベレンは、先住民の文化が根付く街で、食文化がとてもおもしろい。東南アジアやヨーロッパなど、多くの国を訪れてきたが、こんなに興味深い食文化に出会ったのは初めてかもしれない。食べることが大好きな私は、本当に毎日楽しく過ごすことができた。ここでは、おまけとして、そのうちのいくつかをご紹介したい。

◆タカカ

干しえびの入った塩辛いスープ。ジャンブーという舌がピリピリする草が入っているのが何とも興味深い。器も、ココナッツのカラを用いたもの。




◆マニソバ

見た目は良くないがおいしい。マンジョッカの葉っぱと塩漬け肉やリンギッサといわれる腸詰めを煮込んだ料理。




◆アサイのスープ

 アサイというアマゾンの実のスープ。ブラジルの他の地域ではシェークにしてデザートとして食べるので、おかずとして食べるのはここだけ。ちょっと癖のある味で最初は苦手だったが、慣れると恋しくなる味。ベレンと言えばこれ!


                             

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