「エマウスでの活動体験」

Kikuko



この文章は汎アマゾニア日伯協会会報「パンアマゾニア」第248号(2007.11)に掲載されています

 北伯パラ州ベレン市内に「エマウス共和国運動」というコミュニティ教育を行うNGOがあります。

エマウス共和国運動(以下エマウス)は15年以上もの間、日本との交流を続けており、何人もの日本人ボランティアや見学者が、エマウスの施設を訪れています。私もまた、2007年6月よりベレン市内に滞在し、ボランティアの一人として、エマウスに通っています。今回、パンアマゾニアに寄稿させて頂く機会を頂いたので、エマウスの活動と、日本との交流について、紹介させて頂きます。

エマウスは、貧困地域の子ども達の支援を主軸とした活動をしています。

活動の発端は、1970年代に青年達のボランティアグループが、ベレン市内のベロペーゾ市場で労働をする子ども達の支援を始めたことでした。30年以上の年月を経て、地元に根付いたNGOとして、現在は様々なプロジェクトを運営しています。例えば、ストリートチルドレンや家庭内暴力に苦しむ子ども達への芸術教育、子どもの人権問題に関する調査、貧困層の青年や、地域住民を対象とした職業訓練、不要品のリサイクルをする技術訓練などです。



特に、子ども達へのコミュニティ教育は、単なる芸術教育や職業訓練にとどまりません。路上生活や家庭内暴力、性的虐待などの経験を持ち、社会的リスクに直面した子ども達に、これからの人生を自分達の力でより良くしていけるように、活力と希望、チャンスを与えています。

日々の活動の中では、ブラジルの社会問題や環境問題などもとりあげ、子ども達が社会について考えるきっかけとなっています。同時に、エマウスの活動場所は、レジャーの機会の少ない子ども達にとっては、安全な遊び場、友達を作る場にもなっています。(現在の活動拠点は、ベレン市のベングイ地区とジュルーナス地区の2カ所がメインとなっています。)


日本とエマウスの交流は、1990年代前半に始まっています。「世界子ども通信プラッサ」という、世界各地における子ども達に関連した社会問題を学ぶグループが、日本で最初にエマウスとの交流を始めました。その後、1998年頃から、ポルトガル語専攻の学生や、ストリートチルドレンの問題に関心を持った日本の青年達がエマウスを訪問し、見学やボランティア活動をしています。

現在は、エマウスでのボランティア活動を経験し、日本へ帰ったスタッフ達が中心となって、「日本にいながらもエマウスへの支援を続けよう!」と、国内での活動紹介、インターネットでの情報発信、ボランティアや見学者の現地との仲介などを行っています。2006年からは、エマウス内のプロジェクトの一つ、"art de viver"で作っている、アマゾンの素材で作ったアクセサリーを、日本でフェアトレードで販売することを始めました。


私がエマウスでの活動を始めてから、3カ月が経ちました。日々、子ども達のあり余る位のエネルギーに驚かされながら過ごしています。子ども達との生活は、歌あり踊りあり、カポエイラありサッカーあり、時には喧嘩や涙も見られます。毎日楽しく過ごしていますが、日本では想像もできなかった貧困や暴力、様々な社会問題を目にしています。ボランティアをしていると言うよりも、私が学ばせてもらうことばかりです。
現在私が願っていることの一つは、北伯の日系社会と、エマウスの子ども達との交流が、いつか実現するといいなということです。エマウスを訪れている日本人と、6月よりエマウスのスタッフとして働いている日系人の女性によって、子ども達にとって日本人は「違った文化をもった、少し身近な外国人」となっています。日本の絵本の読み聞かせをせがむ子や、日本の太鼓のリズムを知りたがる青年、日本語で名前を書いてと頼んでくる子が大勢います。

しかし一方で、子ども達が日本人について、「自分達と違って、欲しいものは何でも持っているお金持ち」という単純なイメージを抱いていることも、時々感じます。私は、そんな子ども達と、同じ地域に住む日本人や日系人が交流を深め、いつか一緒に何かを作り出すことができたら素敵だなと思っています。

私は今、エマウスの活動を通して、貧富の差や人種の違い、社会的な格差による垣根と柵を取り払うことの難しさと大切さを学んでいます。そして、お互いが心を開くこと、理解し協力しあうことで、社会問題が少しずつ解決へ向かうのではないかと考えています。私のベレン滞在は年末までと短く、これから自分でできることなど本当に些細なことだと思いますが、日本のエマウススタッフと、未来のボランティアの人達と共に、私の願いを叶えることができたらと思っています。

この原稿が、日本とエマウス、そして北伯の日経社会とのつながりの一歩となることと、どなたかが私達の活動に興味を持ってくれることを願っています。

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